【探偵ピート・ジャンセン】
ターニャの体に
これ迄に味わった事のない
温かく、まるで陽射しに
包まれる安らぎにも似た
感覚が流れ込んで来た。
ピートは徐々に凍てつく様な
寒さと、研ぎ澄まされた
何とも不思議な感覚に
包まれていった…
視界がぼやけ、クラウスを
追う視線が霞んでゆく‥
しかし、次の瞬間
辺りの樹木は消え、
追っていたクラウスの
影は、はっきりとした
実体となってピートの
心で捉える事が出来た。
鉛の様に重い腕を挙げ
その姿めがけて銃爪を引く‥
クラウスの実体は再び
影となり、
やがて深い闇の中に堕ちる
様に総ての光が緩やかに
閉ざされて行った。
微かに何者かの叫びを
聴いたところでピートは
意識を失った。