楽園まで行けたなら

きれいな子だと思った。

おれが夏帆と初めて出逢ったのは、その年の開花が遅かった桜の花がちょうど満開だった、高校の入学式でだった。

おれたちが通っていた高校は、県の指定文化財に選ばれた古いレンガ造りの旧校舎と、現代的なそれでも旧校舎の雰囲気を壊さない程度にはおしゃれだったけれど、の新校舎とで構成されていて、その旧校舎のすぐ傍に咲く樹齢50年以上と言われるその桜の木は有名だった。


レンガ造りの校舎と、薄紅の花弁を散らす桜の様はとても儚く、だからこそ幻想的に美しくて、ひそかな撮影スポットだったのだ。

おれは写真が好きで、この場所に惹かれてここを受験したぐらいだったから、入学式が始まる前に思わず訪れてしまったのだ。



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