楽園まで行けたなら
震える声で繰り返されるあたしの名前がすごく愛おしい。何よりも愛おしくて、唯一、大切だった。
あたしは、玄関口にしゃがみこんだゆうとを、守るように抱きしめた。
ゆうとの匂い。ゆうとの感触。
そのすべてを、守ってあげないと、いけないの。
「あたしは、ゆうとの傍に、ずっと居るよ」
「夏帆――――」
ゆうとは何度も何度も、あたしの名前を呼んで、強く抱きしめた。あたしも負けないように、強く強くゆうとを抱きしめて、ゆうとの名前を呼んだ。