楽園まで行けたなら
「夏帆」
切れ長の瞳を潤ませて、その人は泣きそうな、けれどとても幸せそうな顔をした。
優しい指が、存在を確かめるかのようにあたしの顔を撫ぜ、その気持ちよさに目を閉じると、愛おしい口付けが祈るように一度、まぶたに落とされた。
くすぐったさを愛しく思いながら、そっと目を開ける。
吐息がかかりそうなほど近くにあったその人の顔は、とてもとても幸せそうで、とろけそうな優しい笑顔だったんだけど、なんだか今にも消えてしまいそうで、壊れてしまいそうで、あたしは思わず手を伸ばした。
少しだけ、目を見開いて。それからその人は、ふんわりと笑った。