楽園まで行けたなら
その夜、おれは夏帆がいつベットに潜り込んできたのか、気付かなかった。
なんだかすごく眠くて、いつもよりかなり早い時間におれが眠りについてしまった所為もあったと思う。
同棲を始めたときにセミダブルのベットで一緒に寝ようと強引に押し切ったのはおれだった。
夏帆は夜ぐらい一人が良いと呆れたように言っていたけれど、最終的にはしょうがないなと許してくれた。
だから、うとうとしていたとしても夏帆が潜り込んできたらいつもなら気がつくはずだった。
そして少しだけ話をして、夏帆とお休みのキスをしていた。
これはずっと、一種の習慣だった。
2人での生活が単調になってからもずっと、なんとなく続けてきた儀式の、この日の記憶がおれにはない。