楽園まで行けたなら


ゆうとがぱちと目を開けた。

焦点をさまよわせ不安そうだったその顔は、あたしを認めた途端、力が抜けたように頼りなく笑った。


腕の中にいたあたしを、ゆうとはさらに強く抱きしめた。そして瞼に、頬に、唇を落とす。
毎朝毎朝、ゆうとはあたしを確認する。それが別に、嫌ではないのだけれど、



「なぁ、夏帆。おれ馬鹿なんだ。こんなに近くに夏帆はいるのに、いつだって隣で夏帆はいるのに、すごく不安になるんだ。たまらなくなる。

 目を覚ましたら、夏帆がいないんじゃないかって。おれ変なんだよ。夏帆はここにいるのにな」




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