楽園まで行けたなら
おれは、何も分かっちゃいないのだと。
ぎゅっと、華奢な拳を握り締めて、ふわふわの茶色い髪の毛で、彼女は表情を覆い隠した。
ずっと隣にいたはずなのに、おれは夏帆がどんな表情をしているのか、全く想像できなくて。
ああ、これが分かっていないと言うことなのかもしれないと、漠然と思った。
「やっぱり、ゆーとは何も分かってないね」
ぱさっと頭を軽く振って、夏帆は顔を上げた。
にこといつもの笑顔で、夏帆は笑っていた。
なのに、なぜかその笑顔は、おれの胸に突き刺さってしょうがなかった。