泡夏
それから練習して、太陽が蜜柑色に変わってからグランドから俺らは解放された。
水のみ場にたむろってると
「やっぱ、ギラギラした太陽の下でやるのはキツいぜ。
見ろよ、今日だけでこの色の違い」
そう言って腐れ縁の彼方がユニホフォームの袖をめくりながら
くっきりと茶色と袖の奥からのぞく白の境を俺に見せた。
「野球部員の運命っていうヤツだ」
そう言って俺は苦笑した。
「お前はすごいよな、俺、一回もお前の愚痴きいたことねェもん」
「野球は好きでやってることだしな」
「いや、俺がいってるのは野球の事だけじゃなく、学校の先生とか、友達の悪口とか貴樹から聞いたことねェし」
そう彼方が俺に言うと
「こいつ完璧人間だよなー」
蛇口からあふれてくる水を飲んでいた野球部員らが顔をあげて、口からたれる水滴をぬぐいながら
次々と彼方に賛同し始めた。