泡夏

下駄の音を響かせながら明菜が走りよってくる。

薄紅色の下地に牡丹の赤の浴衣を着て、綺麗に髪を巻いた明菜は女の私でも、一瞬見とれる姿だった。


「先輩、早いですね」


明菜は貴樹先輩に夢中な様子で、私に見向きもしない。

恋をしてる明菜。

恋をしてる私。


同じ恋をしていて、恋の相手も同じなのに、皮肉なことに起こす行動は真逆だった。




しょうがないよね。

私は色んなものに絡めとられていて、動けない。


明菜を裏切れない。



そう自分に言い聞かせても、ココロの奥底では

ちがうでしょ、動くのが怖いだけなんだよ。

この穏やかで平凡な日々が変わっていくのに怯えているだけなんだって言う声も聞こえる。






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