泡夏
それを見るとなんとなく胸がスッとした気がした。
「貴樹先輩もそんな風にふざけるぅんだァ?」
明菜が呆気に取られた顔で言った。
そうだよ、カッコいい白馬の王子だとでも思っていた?
内心でそう茶髪を嘲笑った。
「あ、射的だ。俺これ得意なんだぜ」
今まで一言も発さなかった、俺のダチの裕也が言った。
射的の賞品として人形やらお菓子やら色々置いてあるのを見ると、茶髪が甲高い声をあげた。
「きゃァー!あのウサギの人形可愛い~☆貴樹先輩、あれ取ってくれませんか?」
俺を見上げる明菜。
欲しいなら自分でとれよ。
思わずつっこむ俺。
「何、明菜ちゃんあれが欲しいの?俺が取ってやるよ」
裕也が鼻を伸ばして言った。
おまえ、そんなヤツがいいのか。
俺は友達の目のなさに呆れた。
「俺も、美月ちゃんに何か取ろうかな」
そう言って、彼方と裕也に引っ張れて三人は射的の列に並んだ。