泡夏
「好きになった子がいなかったからね」
俺は肩をすくめてみせた。
「それより、射的の列が結構長いから、しばらくどこかでブラブラしてよう」
俺は言った。
「あ、じゃあさっき通りかかった所にあった金魚すくいやりたいです」
「よし、行こうか」
俺は美月の手首をつかんで、人ごみを掻き分けながら進んだ。
美月は俺が手首に触れた瞬間、身体を震わせたが、そのまま俯いてなにも言わなかった。
やっと二人になれた。
その事が俺の心にじわじわと幸福感をしみ込ませた。