泡夏

真っ赤な・・

side美月




「はい、先輩の分の金魚ですよ」

そう言って私が金魚と水の入った袋を渡すと、何故か先輩は困ったように笑った。

「はは、サンキュー」

さっきまで、あんなに金魚が欲しいって言ってたのに、どうしたんだろう?



「そろそろ、明菜たちの射的も終わってると思うので、戻りましょうか」

ホントはもう少しだけ先輩と二人で居たかったが、それはワガママだ、と自分に言い聞かせた。


先輩は何故か私に返事を返さず、ジッと私の顔を見つめた。


先輩の茶色が少しも入っていない、真っ黒な瞳が私を見ている。

綺麗な目。
ドキドキと鼓動が早まった。


「先輩・・・?戻らないと・・・」
私のその言葉は、先輩が人差し指を私の唇に当てたことにより、最後まで続かなかった。








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