泡夏
「先輩、明菜たちは・・・」
きっと探してますよ、と続けようとした私の言葉を先輩の声がさえぎった。
「目をつぶって」
「え?」
私がなぜ、と聞く暇を与えず、先輩の大きく硬い手が私の目を覆った。
「先輩!なんですか!?」
私は、先輩の先の読めない行動に困惑した。
「まあ、まあ、ちょっとだけだから、大人しくしてて」
ドキリとした。
何故なら、先輩の声がすぐに耳の近くでしたからだ。
「先輩、困ります!」
ジタバタする私を見たせいなのか、先輩が笑った。
先輩が笑うと息がかかって、あまりの心臓への衝撃に、私は大人しくなった。
「先輩じゃなくて、貴樹って呼べよ」
「無理です!できません」
「ほら、呼べよ。貴樹、タカキって」
低く、心地よい先輩の声に抗えず、私は吐息と共に、彼の名を呼んだ。
「・・・貴樹」