泡夏
「愛してる」
再び先輩が囁いだ。
なかなか、返事をしない私に焦れたのか、彼の顔にすがるような色が浮かんだ。
その姿を見て、私は無意識のうちに頷いた。
彼は安堵の吐息をはいた。
そして私を抱きしめた。
「嬉しい。これで美月は俺のものだ」
その彼の言葉を聴いた瞬間、明菜の顔が思い浮かんで、罪悪感が胸に押し寄せてきた。
何故今まで、彼女の事を忘れてしまったのだろう。
けれども、彼の胸の中で私は目をつぶった。
きっと、もう引き返せない道を私は歩んでるから。
今はただ、彼の香りに包まれながらいたい・・・・・