泡夏
幸福
side貴樹
「愛してる」
美月を見つめた。
心臓がばくばくして、血流の流れがいっきに速くなった。
どうしよう、ついに言ってしまった。
さっきはい無いって言われたけど、本当は彼氏がいると言われてしまったらどうする?
俺は数日前に美月と歩いている男の姿を頭に浮かべた。
美月は黙っている。
もしかして、あの男がホントに美月の恋人と言うのだろうか?
俺は焦がれた。
美月はそんな俺を桃色に染まった頬で見上げ、ゆっくりと頷いた。
一瞬時がとまったように感じられた。
俺は息を吐きだし、彼女を歓喜と共に強く抱きしめた。
「嬉しい。これで美月は俺のものだ」
自分にこれが幻じゃない事を確認するように俺は言った。
心の奥から振るえが沸き起こる。
もちろん幸福と言う名の喜びのふるえだ。