†Orion†〜Nao's Story〜


初めて出会ったときと同じように、廊下の隅で友達と座り込んでお喋りしている辻さんと出くわす。



「長谷川んとこ?」



先輩の名前をさらりと口にした辻さんに、あたしはほんの少し腹を立てる。



「……辻さん。お父さんに余計なこと言わないでください。あたしが長谷川先輩に会いに来た、とか……」



たっぷりと恨みのこもった口調で言うと、辻さんは整った眉を下げて苦笑した。



「申し訳ないけど、俺は料理長の味方だから」


「……だからって、いちいちチクることないでしょう?」



ムキになって詰め寄るあたしに、辻さんは怯むどころか落ち着き払った態度で言葉を返す。



「……料理長、心配していたよ」


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