†Orion†〜Nao's Story〜
「えっ?」
「奈緒ちゃんの口から長谷川の名前が出てきたとき、“まさか付き合っているんじゃないだろうか”って。
……ほら、長谷川っていい噂ないから」
あたしと先輩が付き合っていることをはっきり分かったんだろう。
辻さんは、出会ったときのように“女癖が悪い”とかはっきり言わず、言葉を濁したように言う。
「だから……それは単なる噂……」
「――奈緒ちゃん……だっけ?」
ただの噂にすぎない、と、言い切ろうとしたとき。
辻さんの傍らにいた、彼の友達が口を挟んできた。
「噂じゃないよ。実際ここに、好きなヤツを長谷川に弄ばれたのがいるんだから」
辻さんの友達はそう言って、ちらりと辻さんに視線を投げかける。
「……辻……さん?」