†Orion†〜Nao's Story〜
何を言うのか決めてもいないくせに。
勢いのあまり、森谷を引き止めてしまったことをほんの少しだけ後悔する。
「えっと……、ありがとう……」
ありきたりな言葉しか思い浮かばない。
ガラにもなく、あたしはあの森谷を前にして、緊張のあまり涙目になってしまう。
「……なんていうか……あたしは……」
この緊張は、先輩に告白したとき以上のものだ。
酸素が足りない。急激に喉が渇いてくる。心臓が破裂してしまいそう。
呼吸のしかたさえ忘れてしまうほどの緊張感。
「…………っ……」
なにも泣くことないのに。
先輩のことで散々泣いて腫れた目から、涙がぽろぽろとあふれ出す。