†Orion†〜Nao's Story〜


「……俺さぁ、部活に行かないといけないんだけど」



自分からあたしを抱きしめておきながら、森谷はいつもの憎たらしい口調で呟く。



「い……行けばいいじゃんっ」


「じゃあ、最後にこれだけ言わせて」


「……なによ」


「……四割方、俺に気持ちがいってるだろ」


「………っ……!」


「図星だな」



……皮肉な運命だ。


たとえば、森谷があたしのことを好きじゃなかったら。

森谷が強引にコトを進めなかったら。


今頃あたしは、周囲の忠告に耳も傾けず、そして現実さえも知らずに、先輩との恋に夢中になっていたんだろうな。



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