†Orion†〜Nao's Story〜
あたしが、とてつもなく最低な暴言を吐いてから一週間。
お父さんとは一度も顔を合わせなくなった。
朝はあたしより早く家を出て、帰ってくるのは、あたしが寝たあとだ。
タイミングよすぎるこの状況に、避けられているに違いないと少なからずショックを受けたけれど。
「……最近、忙しそうだね」
お母さんに思い切って訊くと、その理由はあっさりと分かった。
「いまね、他の店のヘルプに行っているのよ。料理長さんが倒れたとかで」
「……なんで? その店、社員とか、料理長の代わりになるような人いないの?」
「いるにはいるんだけどね。でもやっぱり、料理長不在ってのはよくないのよ」
代わりがいるのに。それじゃあダメなの?
かつてお父さんと同じ店で働いていたお母さんにだけ分かる事情。