†Orion†〜Nao's Story〜


先輩と別れたことを知る亜里沙は、複雑そうな様子で言う。



「ピアスに罪はないのにね」



うん。確かに。

あたしも早まったことをしてしまった。


ピアスにしろ、初めてのエッチにしろ。

あたしの体には苦い思い出が刻まれてばかりだ。



ちらりと、隣の席の森谷に視線を移す。

先輩との関係を清算してから、あいつはiPodを手放した。

今まで自分の分身のように愛用していたiPod。

それを自ら手放したあいつは、頬杖をついてぼんやりと窓の外を眺めている。


顔がはっきりと見えない、斜め45度の角度。

あたしのそばで、亜里沙はピアスの話をいまだにしているけれど。

その話が耳に入ってこないくらいに、あたしは森谷に視線を奪われていた。



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