†Orion†〜Nao's Story〜
「こんな幼稚なもの、手に取るのも恥ずかしいわよ」
怨み口調で言うあたしを見て、お父さんはニッと笑った。
「だよなー? “手に取るのも”恥ずかしいもんなー?」
「………?」
お父さんの大げさな声に、警察に電話する店長の手がぴたりと止まった。
「……なぁ、オバサン」
「えっ!?」
突然“オバサン”と呼ばれた私服警備員は、ドキッとしたのか。
大きな体を一瞬ビクリとさせ、お父さんを見る。
「さっきから偉そうにしてるけど、“私服警備員”のタマゴなんだろ、本当は」
「はあ!? 私は……っ、十年もこの仕事をしています!」