†Orion†〜Nao's Story〜
「じゃあそろそろ引退時だな。
情報を鵜呑みにして、盗る現場をその目で見てもいないくせに。しかも、売り場は死角になっていて防犯カメラも役に立っていない」
「でも、現にこの子のバッグには……っ」
「偶然バッグに入ったとか、誰かに入れられたとか、いろいろ考えられるでしょ」
お父さん……。
オバチャンはそれ以上なにも言えない様子で、下唇をかみ締めてうつむく。
「あ、店長さん。警察には連絡しました?」
「あ……いえ、まだですが……」
「早く呼んでください。で、このペンから娘の指紋が出てこなかったときは……」
たかが万引きで、鑑識呼んで指紋を調べるもんなの?
そうは思ったけれど、あたしは黙っていることにした。