†Orion†〜Nao's Story〜
8.新しい生活


お父さんがヘルプに行っていたお店の料理長さんが復帰して。

また、いつもの日常に戻る。


ピアスを開けるために、お父さんからもらった一万円。

あたしが「使わなかった」と言って返すと、お父さんは追及もせずに「そうか」とだけ言って受け取ってくれた。





「おはよう。手伝うよ、お父さん」



再び訪れた平穏な日常のなかで、少しだけ変わったのはあたしだけだ。

これまで、朝はいちばん最後に起きていたあたしは、お父さんに次いで早起きするようになった。

そして、彼を“お父さん”と呼び、朝食の支度を手伝う。


お父さんは、そんなあたしの変わりようを見て、一瞬だけ泣きそうになるけれど。

あたしがじろりと睨むもんだから、涙をこぼすのを精一杯我慢して、無理に笑顔をつくる。




そして。

例の万引き事件。


おそらく仕組んだのは先輩の彼女。

でも、決定的な証拠もなくて。

あたしの中では、“もう過ぎたこと”になっていたのだけれど――……




< 201 / 220 >

この作品をシェア

pagetop