†Orion†〜Nao's Story〜
8.新しい生活
お父さんがヘルプに行っていたお店の料理長さんが復帰して。
また、いつもの日常に戻る。
ピアスを開けるために、お父さんからもらった一万円。
あたしが「使わなかった」と言って返すと、お父さんは追及もせずに「そうか」とだけ言って受け取ってくれた。
「おはよう。手伝うよ、お父さん」
再び訪れた平穏な日常のなかで、少しだけ変わったのはあたしだけだ。
これまで、朝はいちばん最後に起きていたあたしは、お父さんに次いで早起きするようになった。
そして、彼を“お父さん”と呼び、朝食の支度を手伝う。
お父さんは、そんなあたしの変わりようを見て、一瞬だけ泣きそうになるけれど。
あたしがじろりと睨むもんだから、涙をこぼすのを精一杯我慢して、無理に笑顔をつくる。
そして。
例の万引き事件。
おそらく仕組んだのは先輩の彼女。
でも、決定的な証拠もなくて。
あたしの中では、“もう過ぎたこと”になっていたのだけれど――……