†Orion†〜Nao's Story〜


ヘタレとか、そういう問題じゃないでしょ、この場合。


そりゃあ、先輩のときは勢いで“好き”って言えたけどさ。

“好き”の言葉を待っている相手に対して、改まって言うのは緊張の度合いがあまりにも違いすぎる。比べ物にならない。



「……き」



それでも。

小さな小さな声で。そして、うつむきながら。

少し離れたところにいる森谷に向かって、ボソリと呟いてみる。



「斉藤さーん、きこえませーん」



そんなあたしに、森谷は小学生のような口調で言い返した。



「す……」



あぁ、いやだな。こんな告白のしかたって。



< 206 / 220 >

この作品をシェア

pagetop