†Orion†〜Nao's Story〜
あぁ、もう。
コイツの一言一言、そして些細な動作さえも頭にくる。
「あたしはね、自分の目で見たモノしか信じないタイプなの」
ギャンギャン吠えているあたしの前で、森谷は表情ひとつ変えずに制服のポケットからiPodを取り出し、イヤホンを耳に嵌めようとしている。
人が話しているのに。
カチンときて、あたしはイヤホンを力任せに奪い取った。
「……返せよ」
ここは激怒するところでしょうが。
眉のひとつも動かさず、森谷は冷静沈着な態度で手を差し出す。
「も、もしあたしが、先輩の彼女になれたら、あんた土下座しなさいよ!?」
「……て言うか、何番目の彼女だよ」