†Orion†〜Nao's Story〜
背後にいるその声の主は森谷。
身動きひとつしないあたしの耳に、森谷の呆れたような溜息が続けて聞こえてきた。
「ねぇ、森谷くん。いくらなんでもいきなり告白ってのは無理だよ。奈緒にだって、心の準備ってもんが……」
眉間にシワを寄せ、怪訝そうな顔つきの亜里沙。
森谷は無言のまま、机の上に置かれているあたしのバッグをひょいとかっさらっていく。
「ちょっと! 何すんのよ」
あたしのバッグを片手で持ち、教室をスタスタと出て行く森谷。
「ごめん亜里沙、先に帰ってて!」
「うっ、うん」
あたしは“森谷ー!”と叫びながら、ヤツの後を追いかけた。