†Orion†〜Nao's Story〜
階段を一階まで下りたら、南校舎へ続く渡り廊下がある。
そこを渡って校舎を抜けたら、そこに先輩が待っている……。
なかなか来ないあたしに気づいた森谷が、階段を下りる足を止めて振り返った。
階段の踊り場にある大きな窓から差し込む夕日。
森谷はその光を背中いっぱいに浴びていて、あたしは眩しさのあまり目を細めた。
ヤツがどんな表情をしているか読み取れない。
でも、森谷がこぼした言葉で、とんでもなく意地悪な顔をしていることがはっきり分かった。
「早く来いよ。口先だけのヘタレ女」
挑発するような言葉に、からだじゅうの血管が切れたような気がして。
あたしはものすごい勢いで階段を駆け下りた。
もちろん。
その途中で、森谷のわき腹に一発、拳をお見舞いすることは忘れなかった。