†Orion†〜Nao's Story〜


渡り廊下を抜けて南校舎に入ると、すぐに裏庭に出るドアがある。

重いドアをゆっくりと開け、息を潜めながら裏庭の様子を伺う。


裏庭の奥にある花壇の前に、スラリとした長身の男の人が携帯をいじりながら立っているのが見えた。

……先輩だ。


ちゃんと来てくれたんだ。

あたしを、待っていてくれているんだ。


呼び出されたからといって、律儀に来なくたっていいのに。

適当にごまかして、すっぽかすことくらいできるのに。


先輩が呼び出された場所に来てくれた、というだけで、胸の奥がじんと熱くなる。



「せんぱーい! 遅くなりましたー!」


「!!」



遠慮気味に開けていたドアが、陽気な声とともに全開する。


< 37 / 220 >

この作品をシェア

pagetop