†Orion†〜Nao's Story〜
階段で追い抜いたはずの森谷が、いつのまにかあたしの後ろに立っていて。
こちらに気づいた先輩に向かって、ぶんぶんと大きく手を振っていた。
「あんた……なんで……」
ヒクヒクと顔がひきつるのを感じながら、森谷に問うけれど。
ヤツはそんなことおかまいなしに、あたしの手をギュッと掴み、無理やり先輩のもとに連れて行く。
「ちょっ、やだっ、放してよ!」
「すみませんー、遅くなってー」
ヘラヘラと笑う森谷は、先輩のもとにずんずんと向かっていく。
あたしの足は緊張で震え始め、森谷の歩調に合わせるのが精一杯だった。
「あぁー、この子かぁ」
森谷を通り越してあたしを見る先輩の顔には笑みが広がっている。
その人懐っこい笑顔は、“知ってる”と言わんばかりだ。