僕らの、

続いて、歌の収録に入った。

まあ、メジャーなんだから技術はそこそこあるんだろうけど…

技術があるだけのバンドなら、期待外れだな。

いや、ギタリストのテンションの時点で、技術だけじゃないのもよく分かるんだけど。

「本番10秒前ー」

スタッフの声が聞こえる。

「立川さん!ちゃんと聴いとってな!!」

「!!」

マサが叫んだ。
マネージャーさんは、ため息をついていた
タクさんとユウさんは慣れてるみたいで、特に反応しなかった




うん、聴くよ。


ちゃんと聴いておくから、真面目にやって…。


そんな私の願いとは裏腹に、彼らの演奏は、素晴らしく不真面目なものだった。

マイクが無いはずなのに、マサがすごい声量でシャウトして曲が始まったのだ。

なんであいつ、あんだけ声量があってボーカルじゃないの!?

その疑問はすぐに解決した

タクさんが、それよりすごい声量で歌いだしたのだ。

音量自体はさすがにシャウト相手だと劣るが、それでも普通に歌って、あれだけの音量が出る人はなかなかいないだろう。

タクさんがシャウトしたら、どうなるんだろう。
考えただけで、ゾクッとした。

タクさんって、女性的なかわいい顔をしてる割に、歌うとギャップがすごいな…。


すぐにギタープレイにカメラが寄る。
難しいコードの連続でも、軽々と弾き、ピョンピョンと跳ねる。

ベースもすごく存在感があって、ユウさんの弾く音、一つ一つに感情がこもったように聴こえた。


そして何より、彼らは、最初から最後まで、すごく楽しそうな笑顔だった。

「…これがREDWINEや。覚えてくれたか?」

マネージャーさんが小さな声で言った。

「はい……」
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