解き放つ時。
もう一度丹念に探そうと来た道を引き返し少しした時。見慣れた顔を見つけた。




ー憎むべきあいつを…



俺は奇声を発しながら、全速力で走った。そしてあいつを思い切り殴った。



簡単には死なせてやらない。痛めつけて苦しませてからじゃなきゃ。何度も何度も殴った。拳が痛くなる。それ以上に心が痛くなる。


殺すって決めてたのに…絶対やってやるって思ってたのに。顔が腫れ失神しているこいつを見てると…



姉ちゃんの言葉がふいに頭をよぎった。



`シンゴを犯罪者にしたくない´



泣きたくなんかないのに。泣いちゃ駄目なのに。また涙が流れてくる。





ー結局俺は殺す事が出来なかった。
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