―愛束縛―
太一はアタシの様子がいつもと違う事に気が付いたらしく 太一の家まで遠回りして海岸通りを走ってくれた
冬の海は 想像していた以上に荒く 道路まで波が押し寄せて来そうな勢いだった
「すごい波だね…アタシ冬に夜の海見るの初めてかも」
「俺 鈴の“初めて”の時に側にいれて良かった…」
「太一…
太一ならいっぱいモテるはずなのに どうしてアタシなの?」
「鈴は知らないだろうけど 俺達小さい時に会ってるんだ…」
「うそ?」
「 本当だよ 俺ハーフだろ?だから友達がいなくって よくイジメられてたんだ…
だから いつもここの海に来てたんだよ
この海で遊んでる時に 鈴が両親と来てて 俺に貝殻をくれたんだ…」
「ごめんアタシ 覚えてないや」
「 鈴は言ってくれたんだ“大きくなったら また遊ぼうね”って…ほらこれがその貝殻」
太一はポケットから懐中時計を出し その中に貼ってある貝殻を見せた