―愛束縛―


ファミレスに入って無言だった太一が話し始めた
「俺…何にも知らなくて 鈴が男に襲われそうになってたのも 鈴が助けてもらってたのに 挨拶が遅くなって…すいません」


…太一…


「三上さん…良い彼氏だね」


「ありがとうございます ところで高崎さんはいつこの街から出て行くんです?」


「2・3日中には出ようかと思っているんだけど…」


「じゃあ それまでにこの時計の調子見てもらっとかないと…見てもらえますか?」


「良ければ…俺の懐中時計もお願いします」


「キミ達ふたりで持ってたんだ…」


「そうなんです アタシ達別々に知らない時に買ってるんです」

「すごいな その時計には僕の思い出がたくさん詰まってるんだよ」


「えっ?」


「その時計はね…本当は僕と僕の彼女に贈る物だったんだ」


「イイんですか?アタシそんな大事な物頂いて…」


「イイよ 気にしないで…僕の彼女は3年前に亡くなったんだ 事故でね…僕の誕生日の日にね
 僕達は婚約までしてたんだ…結婚指輪の代わりにこの時計を作っていたんだ…だけど この時計が出来る前に彼女はこの世界から消えてしまったんだ…
最初はこの時計を売る事にためらっていたんだけど ある日夢に彼女が出てきて“せっかく出来た時計を思い出にしてはいけない”って言われたんだよ
それで 決心がついたんだ」

高崎さんは とても優しい顔でコーヒーをスプーンでかき混ぜた


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