先輩彼女



「でも、まだ結構掛かるよ」


「待ってます!」



これ以上何か言っても無駄だと分かり、仕方なくあたしは仕事を続けた。



仕方なく?なんか、部下でも、心配してくれたことがすごく嬉しい。


なんでだろう…


人のこと嫌いなのに…


嬉しい?まさかね…



30分後。

私は仕事を終わらせた。


「終わったよ。行こうか」


松本くんにそう言って、私は自分の荷物を持って、席を立った。



「はい!先輩って、仕事熱心なんですね!」


「そんなことないよ」


素っ気なくしか話せない…


自分で自分が嫌になる…



今までは人に対して、素っ気なくても気にしなかったのに…


松本くんに素っ気なくすると、なんて言うか…


胸の辺りがチクチクする。


分かりたくなんて無かった。

人と話す楽しさとか。




あの人のことで信じられなくなってから初めての感情だった。



正直嬉しかった。

でも、素直に喜べない自分もいた。



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