【短編】デカダンス
スコップを放ると、からん。と音がした。
そこには空しさがあった。
義姉の死体を見下ろす。
雨音があったがそれ以外は静寂と清冽だった。
結局、義姉は一度も僕に「愛してる」とは言ってくれなかった。
望んでいた。
願っていた。
義姉のただその一言を。
欺瞞(ぎまん)にでも、嘲弄(ちょうろう)されようが欲しかった言葉。
けど機会は二度と訪れない。僕自身が断ち切ったのだから。
驟雨が義姉の体を急速に濡らしていく。
ふと、陰茎が反り上がってるのに気付いた。
義姉との交淫が脳内でフラッシュバックを繰り返す。
義姉が、その中でも言うのだ。
イタズラっぽく。
「したい?」、と。
ー了ー