妄想哀歌[短編集]
グロスリップ
「寒いね」
「だから夜道は嫌なのに」
頬を膨らませて彼女は言う
「ごめんね」
「いいよ」
なんてイシシって彼女は笑いながら言う
僕が笑ったら、彼女も また笑う
幸せな時間が
今、あるんだとすごく思うんだ。
そっと右手を伸ばして彼女を手を握る
そしたら優しく握り返してくれた。
「手袋してくれば良かったのに」
「いいの、私専用の人間ホッカイロがあるし」
また彼女は笑う
「ちょっーと汗ばむ時があるけどね!」
「そ、それは」
クスクスと笑い合う僕ら
彼女はよく笑う とても可愛いんだ
そんな彼女に、どうやって伝えればいいんだろう
今の僕には分からない