妄想哀歌[短編集]














「え?」


え?



動揺しないよう
平静を装ってって思った

けどその一言で
そんな事、頭から吹っ飛んだ


心の声は口からも零れてしまった。



「泣いちゃうかもしれないしさ、ね?」

「う、うん」



彼女はとても寂しそうだ、けど笑顔を取り繕っている。




「じゃ、今日はこの辺でいいよ」


もう気付けば
彼女の家までの帰路は終点だった


すぐ前は、もう彼女の家


「あ、ああ」




「また明日ね!」


笑顔でこちらに振り向き手を振る彼女が

すごく すごく すごく遠くに感じた。











僕は何してんだろ

彼女にまで心配され、決意させ



今でないと心配したものを
僕は今さっき奪ってしまった。

彼女はそれを分からないように笑っていたんだね




もう彼女を守れないんだろう。



ふと思った
いや、確信に近いものかも知れない






僕は自宅への帰り道
振り帰り、小さい声で言った。




「明日もいいことありますように」


彼女に届くと信じて














END.














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