妄想哀歌[短編集]
紫の人~Color of Summer~
久しぶりに会った君は、夏の人
雨降る街角、並び歩く僕ら
傘は2つ 想いのように寄り添えない
好きの言葉 ただそれだけ
たった一言なのに それが言えない
先を歩く君の背中までの距離が遠くて
「あ、アジサイ。綺麗ね」
「本当だね」
紫色のワンピースを着て、薄紫傘を差した君は
か細く、弱々しく
どこか遠くを見つめたような表情で
ただ、そこを見ている
なあ、何かあったんだろ?
なんで言ってくれないんだよ
僕は君を守る為に居るんだから
僕は、僕は、僕は
ただ君に幸せであって欲しいだけなんだ