妄想哀歌[短編集]
「久しぶりだよね、いっくんと2人で この道歩くの」
やめてよ
昔を懐かしむのなんて
君の隣には僕は居ない
今も 昔も そして、これからだって
「いつも一緒に帰ってたよね、高校の時」
彼女は笑う、寂しそうに
なんでだよ、僕が幸せにしてやるよ
だから一緒に同じ道を歩いて行こうよ
涙を流さない君は強いんじゃない
弱いだけじゃないか
「いっくん、どうしたの?黙って…」
僕は前に居た彼女を追い抜かして小走りにかける
「い、いっくん?」
なんでだろ
何も言えない自分が許せない
「ねぇ、どうして走るの」
雨の中
離れてく距離に彼女の声も遠くなっていく