妄想哀歌[短編集]
彼女は結婚している
僕は彼女の隣にはもう居る資格はない。
ただ彼女を見つめていたかっただけの
僕の願いはもう叶わない、
でも、それでも、伝えようと思ったんだ
彼女の淋しさをかき消せるならば
「七海、僕はき…」
「あのね、私もう七海じゃないんだ」
彼女はにっこりと弱々しく笑いながら言う。
「今は里中なの」
僕を見つめる彼女は
ただ、どこか遠くに心は置いていったみたいだった。
彼女は僕の心を見透かしたみたいに
その唇は優しい言葉をかける
僕に、そして自分自身に
「私、結婚した。早かったかもって思った時もあったけど、私すごく幸せだよ」
「だから、いっくんも幸せになってね」
僕は雨の中
泣いていたんだと思う。
その言葉が僕を想っててくれたんだと
彼女の気持ちが伝わってきたようで