月から堕ちたアリス
「ちょっと、2人だけで話をしようか。」



リットはそう言ってパチンと指を鳴らす。



その瞬間、あたし達の目の前に上り階段が現れた。


リットはその階段を上がり始める。



「さぁ、屋上へ行こう。トリル、病人3兄弟を頼んだぞ。」

「はいでしゅ!!」



リットに続いてあたしも階段を上る。





階段を上りきると、広い屋上に出た。


眺めは最高だ。



『…あれ??5階なのにやっぱ高くない??!!』

「僕等にもそう見えてるんだ。その方が見晴らしが良くて気持ち良いだろう??」



――まぁ…確かに。


けど、これって力の無駄遣いには入らないのかな…??



『それで、わざわざ2人きりになって何を話すの??』

「――ある少年が、僕のもとにやって来た。」

『はい…??』

「その少年は自分を弟子にしてほしいと、僕に必死に頼んできた。」

『………。』



これは………


とりあえず話を聞けってこと…??



「最初は断っていたんだけど、何度もお願いしに来た。そしてある日、その少年は僕の心を動かす説得をしたんだ。」

『??』

「“僕は跡取りになんかならない。親に決められたレールの上は走りたくない。僕は僕の道を進みたい。僕の夢は一人前の魔術師になって人の役に立つことだ。”――ってね。まさかあんなに小さい子どもがこんなに揺るぎ無い意思を持っているとはね…驚いたよ。彼は、有名な貴族の長男として生まれ、その跡取りになるハズの子だったのさ。」



…きっと、ドルチェのことだ。
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