月から堕ちたアリス
「ルビーはそのせいで心に大きな傷を負っている。失うことを恐れた彼は、これ以上仲間を作らないことに決めたらしい。…もう大切な人を失いたくないから…。――そして、仇をとるために僕のもとで力を磨いているんだ。」

『………。』

「それにね――ルビーの父親…ジェイド=ジュエルと僕は友人だったんだ…。彼はハートの国の兵士の来襲に一族の危機をいち早く感じ、彼から僕への最期の伝言をルビーに残した。そしてそれを伝えるため、彼は僕のもとにルビーを向かわせたんだ…!!!!」



リットは俯き、グッと握りこぶしをつくる。


リットまでそんなに辛い思いをしていたなんて、全く分からなかった…。



『それで…ルビーのお父さんはなんて…??』

「“ハートの国が何かを企んでいる。俺達はもう助からない。リット…――俺達の“希望”を頼んだ。”」

『俺達の…“希望”…』



リットは真っ直ぐあたしを見た。



『それって――…』

「――そう。」



察した様子のあたしを見て柔らかく微笑んだリットは、屋上の端に行き遠い景色を眺めている。























「“俺達の…半竜族の最後の生き残りであるルビーのことを頼んだ。”…ってことだ。



――だから、あの子が仇をとるために力をつけたいって言うのなら…



それを…断れる訳、無いじゃないか――…」



リットは遠い目をしていた。





一族もろとも死んでしまった友人のかつての故郷…


――ダイヤの国のガーネット山脈。



リットは遥か遠くのその土地を見つめている。





…あたしはその後ろ姿からそう感じた。
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