月から堕ちたアリス
「“光宝”は村の中心の高台に置いて日の光を吸収させながら使用し、そこにはいつも見張りの者をつけておった。…しかし、一月ほど前のある晩のことじゃった…。」



あたしは息を飲んで村長さんの話に耳を傾ける。



「いつもなら“光宝”の力で付くハズの明かりがつかない。それどころか、火まで使えなくなってしまったのじゃ…。」

「そして私が真っ暗な中、月の明かりだけを頼りに高台へ様子を見に行ったのです。」



アルトのお父さんが言った。



「すると、見張りの者が気を失って倒れていたのです。慌てて駆け寄り、そのときハッと異変に気付きました。…この村の秘宝、命…“光宝”が無くなっていたのです。」

「見張りが気が付いて何があったのか聞いても、何も覚えてないそうじゃ。その日から、わし等は明かりも火もない生活…光の村と呼ばれたこの村はいつしか闇の村へと変わり果ててしまったのじゃ…!!」

「私達にとって光の無い今の生活はとても苦しいものです…!!」



辛そうな顔を目の当たりにしたあたしは胸が痛んだ。


これじゃ、かわいそうだ…
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