月から堕ちたアリス
声の方を覗くと2人の人影。



『さっきの先輩と………歩……。』



抱き合う2人の距離はとても近い。


その衝撃に手に力が入らなくなり、思わず鞄を落としてしまった。



「誰っ???!!!」



2人がこちらを見る。

あたしは固まった。



「またさっきの女?!階段から転げ落ちてもまだ懲りないのっ??あんたがどれだけ好きでも歩はあたしのものなの!!!!」



膝がガクガク震える。

そして歩と目が合った。



お願い…

歩、あたし達は付き合ってるんだってこと言って…??



そんな願いを託して歩を見つめた。































「…あれ??何か変なとこ見られちゃったなぁ〜。俺達のこと黙っててもらえないかな。――“有村さん”…??」





歩から出た言葉はあたしの期待を粉々にするようなものだった。





――いや、期待したあたしがバカなだけ。



だって元々、歩とあたしは秘密で付き合うっていうのが条件なんだ。



こういうときのため…





そうでしょ…??



歩………。
















あたしは鞄を拾うことも忘れて無我夢中でその場から走り出した。
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