月から堕ちたアリス
『…ぅっ……ひっく……』



涙が溢れる。


あたしは神社に駆け込み、そこで崩れ落ちるようにして地面にしゃがみこんだ。



嫌だ。


何もかも嫌だ。


もうたくさんだ、こんな人生。





『もうこんな人生……







嫌だよっ―――!!!!』



全てに嫌気が差し、その言葉を口にしてしまった刹那、






――ザアァァァァッ!!!!――



強い突風が吹いて、周りの木々が激しくざわめいた。




あたしは反射的に目をつぶった。



しばらくすると風が弱まり、余韻だけが辺りに残る。

























「だからやめちゃいなって何度も言ったのに。――そんな人生。」



体にビクッと衝撃が走る。


今まで頭の中でだけ聞いていたその声。


それが今、リアルなものとしてあたしの耳に入ってきた。





恐る恐る目を開ける。


しゃがみこむあたしの視界に入る誰かの脚。





あたしはゆっくりと、脚から上を見上げた。



「やっと、見つけた。ずっと探してた。――俺の救世主(アリス)。」



その人物はあたしと同じくらいの年の、赤い瞳を持つ整った顔立ちをした白髪の少年。


白のブラウスに赤のベスト、黒のネクタイとズボンという装い。

首には手のひらサイズの金の懐中時計を下げている。




ただ、何となく普通の人とはオーラが違う気がした。




そして、あたしは気付いてしまった。







少年の頭から生えている何か。















それは例えるならば、





―――兎の耳だった。
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