月から堕ちたアリス
「“あっちの世界”に行く気になった??」

『!!!!』



突然真後ろから聞こえた声に振り返ると、至近距離に立っている少年がいた。



そのあまりの近さに身を引きそうになったが、すぐ後ろが湖だということを思い出して踏みとどまった。


お昼の階段でのときのようにはなりたくない。



「まぁ、だから俺を追ってきたんだろ??」



その少年はまたにやりと笑う。

何だかそう思われているのを癪に感じた。



『…違うしっ!!あんたがあたしの鞄持っていっちゃうからでしょ?!』

「…ふーん??じゃあこれを持ってまた“そっち”に戻りたいの??」



今の気持ちとしては、――正直帰りたくない。



でも、この少年といる方が嫌な予感がする。


ってか、“あっち”とか“そっち”とか訳が分からない。



「いい加減覚悟決めろよ。いつまでここに踏みとどまってる気??折角俺がここまで導いてんだからさ。」

『何が――』



突然、少年があたしの両肩を掴んだ。



「どうせもうあんたに決まってる訳だし。あんたの覚悟は待ってらんない。じゃあ、また“あっちの世界”で。」

『ちょ、どういう意味――』



――トンッ――



え……………………??



――バッシャーン!!――



一体何が起きたのか気付いたときには、あたしはもう水の中だった。





あたしは少年に肩を押され、湖へ後ろから落ちたのだ。

































これが“あっちの世界”への入り口だとは、このときのあたしはまだ気付いていなかった――…
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