月から堕ちたアリス
――ゴボゴボッ…――



上へ上がろうともがいても、どんどん下へ沈んでいく。



『(苦、し、い…っ!!)』



水の中で声にならない声を出す。







すると、突然水の中を抜け、空中に放り出された。


それでもなお、仰向けで下へ落下しているあたし。



うっすらと目を開けると、上には青白い満月が映っている水面がある。



あれ………??


何で上に湖があるの??


何であたし、空に向かって堕ちてるの…??









堕ちていく…

どんどん堕ちていく…





そうだ、この感覚。


あの夢と同じだ。





――というより、これも夢なのかな??



だったら、何かもうどうでもいいや。



このまま眠って、起きたらきっとまた日常に戻る。
































あれ。

“日常”ってなんだっけ。




ここはどこで、


あたしは誰だっけ。



急に色々なことが思い出せなくなった。





あたしは――



あたしの名前は――…
























【アリス。あんたの名前は、アリスだ。】





アリス………??





違う…


合ってるようで、何か違う。






あたしの名前は………






























『…優。あたしの名前は、優。』



その瞬間、自分の記憶がまた甦った。





そしてあたしは堕ちている途中で意識を失った。
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