月から堕ちたアリス
「はい。…あぁ……え、今…??…いや、別に。…分かった分かった、今から行くって。…あぁ。」



………また、か。



「悪い、優。俺ちょっとダチに呼ばれちゃってさ。急ぎだからみんなに言っといてくんない??」

『…うん、分かった!!』

「さんきゅー。じゃあ俺行くわ。またな。」



あたしは精一杯の笑顔で送り出した。




















―――これから“別”の彼女の元へ向かうであろう歩を。























当時あたしがまだ高校生になったばかりのとき。



入学式だというのに、遅刻ギリギリで高校の門に入ったあたし。



最悪っ!!!!

まだ初日なのに!!!!

しかもどこに行けば良いの??!!





そんなとき、あなたを見つけた。


風になびくさらさらの茶髪。

揺れるピアス。


――桜の木の下にいる歩を。



ゆっくりこちらを振り返った歩。

そして目が合うとあたしに向かって笑いかけてきた。





あたしはその一瞬で恋に落ちた。



衝撃的で動けなかった。


桜の花びらが舞うそこへ立っている歩が綺麗過ぎて、その姿から目が離せなかった。
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