月から堕ちたアリス
『あの…着替えたけど…。』

「…うん。よく似合ってる。」



着替えたあたしを見ると、テヌートさんはニッコリと笑った。



「それは昔アリスに渡すようにある人から預かってたものなの。あと、これも。」



そう言って次に渡されたのは、先端に三日月を型どったオブジェが付いた杖だった。

三日月の真ん中にはキラリと輝く青の石が埋め込まれている。



受け取ったその杖からは、服よりも強い不思議な力を感じた。



『これは…??』

「神具“凛月”』(シング リンゲツ)。――その昔、月の神の加護を受けたといわれる伝説の杖…魔法使いの持つ魔力を最大限に引き出してくれるらしいわ。それに埋め込まれている石は神石(シンセキ)といって強大な力を秘めているの。」

『え…?!伝説の杖なんて大層なものが何でここにあるの?!一体誰が??』

「それは――…とりあえず置いといて…この世界には他にも様々な神具があるらしいの。もしかしたら旅をしている途中に他の神具と出逢うかもしれないわね。」

『…これ、あたしが使うの??っていうか使えるの??』

「旅するってことは危険なことよ。…まぁ身を持って体験して十分分かってるだろうけど。その危険を回避するためには戦う力と心構えが必要。アリスの力と気持ち次第で“凛月”はきっと力を貸してくれると思うわ。」

『…そっか。どのみち女王と戦う訳だしね。早速練習しなきゃ!!』



あたしは家の外へ出た。
< 47 / 246 >

この作品をシェア

pagetop